金曜日, 12月 29, 2006

アリスの世界


 「不思議の国のアリス」(高橋康也訳)を読み、「鏡の国のアリス」(安井泉訳)を読み、今「子供部屋のアリス」を読もうとしている。いずれも公共図書館で借りたもの。(「英語で読むアリス」をだいぶ前に予約しているがまだこない。)
 どちらも大変面白いと思ったが、?、訳がおかしいのか、イラストがおかしいのか、どちらだろうか、と思ったところがいくつかあった。
 「鏡の国のアリス」(高橋訳)から2つご紹介すると、1つは pp.14~15の次のところ。
 
 「・・・。黒の子猫が毛糸玉をあちこちに転がしたので、とうとう毛糸玉は全部ほどけてしまいまし。・・・。そして、黒の子猫と「毛糸玉」を抱えて、ソファーによじ登って・・・」
 → 全てほどけてしまったのなら、もはや毛糸玉ではないはず。
 (自分の訳が一番良いと豪語する)山形浩生訳(朝日出版社刊)を見ると、「・・・それから、子猫と毛糸を持ってソファーによじのぼり・・・」となっていて、「毛糸玉」とは訳してはいない。
 もう1ケ所は、p.62のトゥルイードルダムとトゥイードルディーが「お互いに相手の首に腕をまわして、木の下にたっていました」(高橋訳)と いうところ。しかし、一人が相手の首に腕をまわせば、もう一人は相手の背中に手をやるというのが常識的か? 両方とも相手の首にやろうとすると少しむつか しそう。ちなみに、ジョン・テニエルのイラストでは、一人はやはり相手の「背中に」腕をまわしている。原文はどうなっているのだろうか? 原文はそうなっ ていても、テニエルはそんなこと不自然とばかりに、無視したの? 山形訳でも同じようにお互いの首に腕をまわしており、スソアキコのイラストでも二人と も相手の首に腕をまわして、だきあっている。イラストや絵だったら、騙し絵のように現実にありえないことも描けてしまい、不自然におもわなかったりする が、いかがだろうか?
 
 『子供部屋のアリス』(高橋訳、新書館)の訳者解説で、高橋氏は、次のように書いており、興味深い。

 また、第10章の「きちがいティー・パーティ」でアリスは
 自分でお茶をつぎ、バタつきパンをたべました」の後、
 キャロルは、「もっとも、どこからバタつきパンをとった
 のか、私は知りませんよ」と書いています。なるほど、そ
 ういえば、挿絵にはバタつきパンも皿も書いてありませ
 ん。テニエルが書き忘れたのを、キャロルはからかって
 いるのでしょうか。そうかも知れません。
 とにかく、こんなふうにことばと絵のくいちがいを指摘す
 ることは、それだけでおもしろくて、ちいさな読者をひき
 つけるでしょう。

 ということは、文と挿絵の食い違いは、単なるうっかりではないということでしょうか?

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