土曜日, 8月 11, 2007

備忘録(2007.08.11)


本日地元の公共図書館で借りたもの
1)夏目房之介『孫が読む漱石』(実業之日本社、2006年2月)
2)本城靖久『グランド・ツアー(英国貴族の放蕩就学旅行)』(中央公論社、1983年/中公文庫、1994年11月)
3)小林康夫、舟曳建夫(編)『知のモラル』(東大出版会、1996年)
・これは読むためではなく、調べたいことがあるために借りたもの。
4)ビデオ:「(歴史紀行ドキュメンタリー)大航海:ヴァスコダ・ガマの道」第3巻(北西アフリカ)(海工房、1999年)

1)夏目房之介『孫が読む漱石』
・漫画家・夏目房之介のエッセイであるため、この本も大変読み易いが、今回は「(祖父)漱石の作品を孫が読む」ということで、真剣に対峙した形跡があり、推敲した文章も散見される。漱石は内臓(特に胃腸)が弱く、神経衰弱(あるいは不安症)に苦しんだが、房之介も同じ病にかかっており、その点では孫は祖父に親近感をもっている。父は若い頃ヨーロッパに遊学し、音楽家として60歳まで東京フィル?で活躍し、その後は91歳で死ぬまで遊んで暮らしたとのことであるので、祖父から孫に真面目さが隔世遺伝したのだろうか。
 本書から少し引用してみよう。
(p.24)ちなみに、僕(房之介)は大学卒業後、小さな出版社に勤めながら内緒でフリーライターやマンガ家の仕事をしていて、その得意先が週刊朝日であった。・・・。奇妙な縁で、祖父と僕は朝日新聞社によってモノ書き家業として独立しえたわけなのだ。隔世で(=父は音楽家のため)、人生の岐路にお世話になったのである。
(p.28)40歳前後というのは、僕にとっても心身の変化にとまどった、かなりつらい時期だった。手塚治虫論をきっかけに、今のマンガ論の仕事に没頭したのは40歳代始めで、週刊朝日のような80年代面白主義的な仕事から、商売として成り立つ読者市場などなかった本格的なマンガ批評に踏み込むのは勇気がいった。
(p.30)漱石が小説を書いたのは49歳で死ぬまでのわずか10年ほどであった。まるで生き急ぐかのように小説を書き、胃潰瘍で何度も倒れ、ついに未刊の『明暗』を遺してばたりと逝く。かっこいいといえば言えるけど、見習いたくない。彼(祖父)の苦労を取り戻すかのように、(少なくとも周囲から見れば)気楽に生きた父は、91歳で大往生した。
(p.40)没後の印税でうるおった夏目家だったが、じつは昔の著作権法では著作権保護期間は本人の死後30年だった。つまり漱石の著作権は昭和21年できれる。
(p.41-42)著作権の保護は、一面で文化創造を奨励する作家保護政策だが、他方、無制限な権利濫用を認めるものでない。創造された文化は社会に共有されて意味を持つ。・・・。が、えてして法律に強くない遺族が、急に感情的に必要以上の権利を主張することがある。・・・。「もし死後50年だったら、孫も恩恵を受けたのにね」とよく冗談を言われる。僕も「そうなんだよなあ」とかいいながら、本当は美田がなくてよかったと思っている。戦後の社会、家長制消えた世の中で漱石の遺産が長く生きていたら、親族間でどれほど醜いことになっていたが、考えるだけでうんざりする。
(p.104)(『我輩は猫である』は)何しろ、近代日本国家を双肩に担った大知識人が、神経衰弱のリハビリに書いた小説だけに、冗談も教養のダジャレなら、近代百年の構造的未来予測のご高説も冗談となって織り込んである。油断ならないのである。

(2007.08.14追記)
本城靖久『グランド・ツアー(英国貴族の放蕩就学旅行)』
・この本も読みやすく、興味深く読めた。何でも、サントリー学芸賞とかいうのを受賞しているらしい。
・英国貴族の青年を国際人にするためにヨーロッパ大陸(主にフランスとイタリア)に遊学させたのは18世紀英国のことであるが、大学が充実するにつれて、このような慣行はなくなっtいった。従ってラッセルの場合は、グランド・ツアーではないが、ケンブリッジ大学を卒業してすぐに、妻アリスを伴ってドイツのベルリン大学に留学するとともに、イタリアには毎年旅行するようになった。この本は、英国貴族を理解するためには、有益だろう。
(p.189)(ヨーロッパ人とアルプス)18世紀の中葉になるまでは、高い峰がつらなり断崖絶壁のそそり立つアルプスの山々というものは、ヨーロッパ人にとっては、恐怖と嫌悪の対象でしかなかった。・・・。ところが、自然賛美を説くルソーの著書が次々とペストセラーになるや、ヨーロッパの上流階級の自然観、美意識に変化が生じた。ルソーの影響力により、ヨーロッパ人はにわかに自然の美にめざめ、自然の美を鑑賞するようになりだしたのである。そこで18世紀の中葉以降、アルプスの高峰や氷河も観光の対象となるようになり、イタリアに行くのにも、アルプス越えの道を選ぶ人が増えてきた。・・・。

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