昨日公共図書館で借りた本
1)松岡正剛『知の編集工学』(朝日新聞社、1996年8月刊)
2)アラン・S.ミラー他『女が男を厳しく選ぶ理由』(阪急コミュニケーshジョン、2007年8月刊)
3)沢村貞子『私の浅草』(埼玉福祉会、昭和58年/大型活字本)
・底本=暮らしの手帖社刊『私の浅草』
・大きな写真追加した「豪華・大型本」と勘違いして借りたところ、弱視者用の「大型活字本」であった。
・本書は、第25回日本エッセイスト・クラブ賞受賞作であり、『貝のうた』とともにNHK朝の連続テレビ小説「おていちゃん」の原作となったとのこと。
4)藤井旭『(一日一話の星空案内)星空を見上げて365日』(誠文堂新光社、2007年10月)
★沢村貞子『私の浅草』(装画=花森安治)
・浅草界隈に暮らす庶民の日常生活を活き活きと書き記した自伝的随筆約70篇(例:あたりみかん、銭湯、初詣、駄菓子屋騒動、たかが亭主の浮気、物売り、浅草娘、お花見役者、化粧、三社祭、ほおずき市、ヘチマの水、五黄の寅、萬盛庵物語、宮戸座、花屋敷のあたり、役者ばか、・・・)。当時の下町の(春夏秋冬、各月の行事や風習など)1年の暮らしぶりや風情を垣間見ることができる。
(p.76)観音さま附近、伝法院の庭、花屋敷の前の茶畑など、あっちこっちに空地があったのは、しあわせだった。
(p.90)浅草では、堅気の女はほとんど化粧をしかなった。土地柄で、水商売の女と毎日顔を突き合わせて暮らしているけれど、その濃化粧をうらやむもしないし軽蔑もしない。厚すぎる白粉も、赤すぎる口紅も、商売上のこと、と知っているからだった。だから、色を売らずにすむ女は、
ヘチマの水で叩くぐらいがちょうどいいとこ、それ以上のお化粧は、味噌汁が白粉くさくなる、といやがった。
(p.97)(母は)「寝るほど楽があるなかに、浮世のバカが起きて働く・・・」とつぶやくくせに、夜が明ければもう、さっさとタスキをかけて、台所に立っていた。なぜそんなに働くのか、と聞けば、「こんにちさまに申し訳がないからさ」と、いとも答えた。
(p.237)この原稿を書き続けている間、何度も浅草へ出かけました。昔、お世話になった方たちや、幼馴染にもおおぜいお逢いして、遠い日の思い出を語り合い、時間を忘れる楽しいひとときをすごすことが出来ました。
★2008.01.06追記
アラン・S.ミラー他『女が男を厳しく選ぶ理由』・(ダーウィニズムを基礎とし、発展しつつある)「進化心理学」によって、人間の本性(人間性)を解明しようとする意欲的な試み。進化心理学の啓蒙書あるいは入門書となることを目指して本書は執筆されている。遺伝子レベルにおける人間の繁殖行動が基本的動因となって、人間や社会の営みがなされているという基本的な考え方のもと、いろいろな人間や社会の現象を説明しようとしている。この考え方でかなりのものがそれなりに(合理的に)説明できるが、あくまでも仮説であり、大きな錯誤がないとは断言できない。本書においては、社会科学的な説明は、一応すべて排除し、進化心理学で可能な限り説明しようとしている。学問においては、それは正当な方法ではあるが、危険もいっぱい存在している。下記の引用にあるように、(事実を語っているだけで価値判断を下しているわけではないと主張しながら)強いもの(国家でいえばアメリカ、社会で言えばマネー・ゲームの勝者)が世界を支配するのは「自然なこと」であるということを暗に主張することにもなりかねない。
以下、備忘録的にいくつか引用しておく。
(p.10)人間の行動を決定するのは、生まれ持った本性、それに各人の個人的な体験と育ってきた環境である。いずれも私たちの考え、感情、行動を大きく左右する。
この本では、体験と環境の影響はほとんど無視して、人間の本性を重点的に扱う。これには理由がある。(p.13)・・・。学者、とりわけ社会科学者にはリベラルな左派が多く、進化心理学の学問的な議論では自然主義的な誤謬おりも、道徳主義的な誤謬のほうが大きな問題となる。大半の学者は自然主義的な誤謬をおかすことはまずないが、道徳主義的な誤謬にはしばしば足をすくわれる。(自然主義的な誤謬とは、「~である」から「~であるべきだ」へと論理的な飛躍をすることであり、道徳主義的な誤謬とは、「~であるべきだ」から「~である」へと論理的な飛躍をすること)
(p.21)標準社会科学モデルの原則4:・・・、まっさらな書字板に文字が書かれるように、人間の本性は誕生後に形づくられることになる。標準社会科学モデルは、この人間形成を生涯にわたって続く社会化のプロセスとみなす。
(p.27)進化心理学の原則1:人間は動物である。/原則2:脳は特別な器官ではない。進化心理学にとって、脳は、手や膵臓と同じように人間の体の一部にすぎない。
(p.31)・・・。私たちの脳は、祖先の環境になかったものや状況を理解できず、私たちはそのうした状況に必ずしもうまく対処できない(←過去1万年の間に人間は急速に進化したために、あるいは環境を激変させてしまったために・・・)。
(p.33)私たちの脳は、食べ物がなかなか手に入らず、いつ手に入るか予測できない狩猟採集生活を今も続けているともりでいる(←裕福なアメリカ人などがなぜ健康に悪いような肥満になるかというと・・・)。
(p.145)子どもが生き残り、性的に成熟するには、父親ではなく母親が長生きして、子どもを物質的に支えることが重要になる。女が男と比べてリスクを回避する傾向が強いのはこのためだと、キャンベルはいう。
(p.159)男は20代初めまではライバルと競争し、勝とうとするが、子どもの誕生をきっかけに、そうした衝動は衰える。結婚し子どもができると、男性科学者は昼夜を問わず実験室にこもりたい気分ではなくなるし、男性の犯罪者は大きな危険を冒してまで違法行為をしようとは思わなくなる。・・・。進化心理学で言えば、目的は繁殖の成功(結婚と子どもの誕生)である。男がすることは、犯罪であれ科学研究であれ、すべてこの究極の目的を達成するための手段なのだ。
(p.193)そのため、一夫多妻制の下では、男同士の競争が激化する。とくに地位の低い若い男は、地位の高い年長の男が多くの妻めとっていれば、繁殖機会をもてない可能性がたかくなるため、死に物狂いの競争に灰sる。・・・。一夫多妻の社会では殺人やレイプなど暴力犯罪の発生率が高いことがわかっている。このように、イスラム社会では、一夫多妻であることが、自爆テロ犯を生み出す一つの誘引になっている。・・・。(p.194)一夫多妻に加えて、若い男を自爆テロに駆り立てる重要な要因は、コーランに書かれた約束である。殉教者は天国で72人の処女妻に迎えられるというものだ。これは、地上で繁殖機会を奪われた若いイスラム教徒の男にとって、自爆テロに走る強い動機付けとなる。