いつも同じようなことばかり、綺麗ごとばかり言っている、といった印象があtったため、この本(『美しい国へ』)も気に入らないことがいっぱい書いてあるだろうと予想していたが、余り抵抗なく読了することができた(きょう1日で読み通した)。
ただし、一見気の利いたことを書いているつもりかも知れないが、美辞麗句がならんでいて、深さは余り感じられない。(この本は、図書館で借りたものであるが、30人くらいの予約者がいてようやく借りることができたものであるが、女性が気に入りそうな書き方が随所にしてあるように感じた。奥さんのアドバイスをかなり受けているのではないだろうか。)
少し気になった記述を少しだけあげておく。
1)(p.17)アメリカには、封建制度の歴史がない。生まれながらにして平等な社会が原則であり、その制度や権力は、新大陸に渡ったピューリタンたち個々人の合意のうえでつくられた。だから自由主義と民主主義が対立することなく共存できた。
→ アメリカ国民たる黒人に公民権が認められたのは、そんなに昔のことではない。最近ではヒスパニック住民が4,000万人ほどに近くなっており、「生まれながらにして平等な社会」というのは言い過ぎであろう。
2)(p.25)たしかに軍部の独走は事実であり、もっとも大きな責任は時の指導者である。だが、昭和17,18年の新聞には「断固戦うべし」という活字が躍っている。列強がアフリカ、アジアの植民地を既得権化するなか、マスコミを含め★民意の多くは軍部を支持していたのではないか。
→ 正確かつ詳細な情報が、国やマスコミによって国民に提供されていたのなら、国民にも大きな責任がある。しかし、そうではない以上、(国民の責任も少なくないとしても)わざわざ「民意の多くは軍部を支持していた」などと書くことは、責任の所在をあやふやにするものであろう。
3)(p25)(父の安倍晋太郎から、自分の秘書に生るように言われた時に、安倍晋三が父に言った言葉)「わたしにも会社(神戸製鋼?)があります。これでも年間数十億ぐらいの仕事はしているんです。」(←これは、総理大臣をめざす安倍氏のイメージアップのための宣伝文か? 会社時代の安倍氏は、「箸にも棒にも掛かからなかった」と元の同僚が言っているのを週刊誌かなんかで読んだ記憶があるが、果たして中傷か?)
4)(p.61)明治以後の日本は、西欧列強がアフリカやアジアの植民地分割をはじめているなかにあって、統治する方に回るか、統治されるほうになるのか、という二者択一を迫られていた。」
→ 第3の道はないというのか?
5)(p.131)「このことが何を意味するかというと、たとえば、日本の周辺国有事のさいに出動した米軍の兵士が、公海上で遭難し、自衛隊がかれらの救助にあたっているとき、敵から攻撃を受けたら、自衛隊はその場を立ち去らなければならいないのである。たとえその米兵が邦人救助の任務にあたっていたとしてもである。」
→ 非常に無理な状況設定をしている。
6)(p.150)「たとえば、日本は過去の歴史の過ちについて中国に謝罪していないのではないか、とよく言われるが、本当のところは、正式に20回以上の謝罪をしている。」
→ そのような正式な謝罪した直後において、★閣僚が★、その倍以上の回数の不適切な発言をしても、個人の意見として処分をしないようであれば、「正式な」謝罪も言葉だけのものと受け取られても無理はないのではないか?
7)(p.155)日本人は、昔から道徳を重んじてきた民族である。儒教から礼節を学び、仏教の禅から自らを律する精神を、そして神道からは祖先を尊崇し、自然を畏怖するこころを学んできた。寛容な心は、日本人の特質のひとつである。
→ もっと歴史(日本史と世界史)を詳細に学んでもらいたい。